阻喪 [bike]
~自動二輪な日々 Vol.58~
『女神は静かな場所に降臨する』 第7話
段々と激しさを増す雨。
レインコートに身を包み峠を登り始めていた。
峠の名前は三国峠。
山梨~神奈川~静岡と3県を跨いでいる峠だ!
日曜の割には交通量は少ない。
3台のバイクが山道を登っていくと・・・、
遠くからトラックが近づいてくるのが見えた。
瞬間、悪寒が走ったのは雨粒が背中に入ったからだ。
だがそれはこれから起こる試練の予兆だったのかもしれない・・・。
段々と近づいてくるトラック。
ちょっとイヤ~な予感がしてバイクを車道の左端へ寄せる。
徐々にそのシルエットが大きくなってくるトラック。
そしてすれ違った瞬間・・・、
雨水のシャワーをかぶる!!
やっぱりやってきたか・・・( ̄ロ ̄lll)。
すれ違ったトラックが思いっきり水溜りの水を巻き上げていった。
「ヤラレター」と思った瞬間、そのトラックの後に2台のトラックが続く・・・。
立て続けに3台のトラックとすれ違い、3台のトラックが巻き上げた水溜りの水を全身に浴びる事になった。
そしてその水がヘルメットやレインコートの隙間から中に入り込む。
油断していた私へ突然の洗礼!
余裕をこいていた私を戒めるように試練が舞い降りる。
緩みきった心の隙間に浴びた雨水のシャワーは、一気に私の心を萎えさせた。
それからも萎縮してしまった心に更なる仕打ちが始まる。
冷え切った空気がレインコートの隙間から入り込み、容赦なく体温を奪い始めたのだ。
寒さに凍え両肩に力が入り全身が硬直し始める。
一緒に走っている2台のバイクも同じ様な試練を受けているはずだが、その2人は百戦錬磨。
一向にそんな素振りを見せずに走り続けている。
凍える両手でアクセルを調節しつつ山道を登り続けると、次なる敵が!
ん・・・?遠くにトラックが見える・・・
「またしてもすれ違うのか・・・?」
と、覚悟をしたがそのトラックはなかなか近づいてこない。
それどころか時折姿を消してはまた現れるってのを繰り返していた。
もしかしてこれは・・・?
数分後・・・。
トラックの真後ろを3台のバイクが追走していた
激しく降り続ける雨。
だがその雨は空から降ってきているものではなく、前方のトラックが巻き上げているものだった!
トラックが巻き上がる雨を全身にかぶりながらツーリングは続く。
レインコートの隙間から容赦なく入り込んでくる雨水。
もはやレインコートは意味を成していない・・・。
パンツまで濡らし身体はすっかり冷え切ってしまった。
それでもトラックは容赦ない雨水のシャワーを浴びせ続ける。
もう・・・ダ・・・メ・・・。(o_ _)o))
心が折れた。
調子に乗った私がバカだった・・・。
そんな自暴自棄になりそうになった時、路側帯の木の下にバイクを停車する3人。
しばらくトラックから離れる為だ。
リーダーのMさんはナビを操作して帰り道を検索している。
Yさんは携帯電話で誰かと話を始めた。
抜け殻になってしまった私は呆然とバイクに跨ったまま進行方向を見つめる。
その先には厚い雲が垂れ込め、激しい雨が降り続けていた。
木々の隙間から落ちてくる雨水が、ポタポタとMAXAMに滴り落ちる。
止みそうもない雨と、残された家までの距離・・・。
それを考えると、折れてしまった心はなかなか立ち直ってくれない。
しかし!そんな打ちひしがれた男の下に、突如女神が舞い降りる♡
(つづく)
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